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COLUMN 11

新築ワンルームが失敗しやすいと
言われる理由。出口から逆算する

2026-09-08 約9分 最終更新:2026-09-08 執筆:株式会社アールラボ

新築ワンルームの提案書は、たいてい入口の数字で作られています。月々の負担がいくらかは書いてありますが、10年後にいくらで売れれば元が取れるのかは書いてありません。

この記事では、出口から逆算します。これまでの記事と同じ新築区分マンション1戸の提案書を使い、10年後に必要な売却価格を先に出したうえで、修繕積立金がどう動くのか、中古としていくらで売買が成立しているのかを一次情報で確かめます。

CONCLUSION|この記事の結論
  • この提案書では、10年後に購入価格の82.7%(約2,051万円)で売れて、ようやく投じた資金を回収できます。新築で買ったものを、築10年の中古として8割超で売れるかどうかが判断の中心です。
  • 運営費は据え置きの前提になっていることが多いのですが、国土交通省のガイドラインが示す修繕積立金の目安は専有面積1㎡あたり月335円(20階未満・延床5,000㎡未満の平均値)で、25㎡なら月8,375円にあたります。段階増額積立方式では、当初の額が低く設定されているぶん後から上がります。
  • 家賃が年1%下がり、6年目から運営費が18,000円になるだけで、10年の持ち出しは約23万円から約105万円、必要な売却価格は購入価格の86.2%まで上がります。新築ワンルームで起きているのは、この「入口と出口の距離」です。

この記事で使う提案書

弊社のコラムはすべて同じ1件で通しています。記事を横に並べて、どの前提を動かすと何が変わるのかを比べられるようにするためです。

この記事で使う提案書|新築区分マンション1戸PROPOSAL
物件価格
2,480万円
借入額
2,500万円(金利1.9% / 35年 / 元利均等)
想定家賃
92,000円/月(据え置き)
空室率
0%
運営費
12,400円/月(管理費・修繕積立金)
月々の返済
81,538円
月々のご負担
約2,000円

10年後の残債は約1,946万円です。専有面積は25㎡、地上10階建て・延床5,000㎡未満のマンションを想定します(修繕積立金の目安を当てはめるための仮定です)。

金利水準の参照:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」

まず出口から逆算する

提案書に書かれている「月々約2,000円」は、10年間で約23万円の持ち出しになります。この23万円と、10年後に残っている残債1,946万円の両方を、売却代金で回収できて初めて元が取れます。

回収に必要な売却価格 =(10年後の残債 + 累計の持ち出し)÷(1 − 売却諸費用率)
(19,460,123円 + 232,616円)÷ 0.96 = 20,513,270円。購入価格2,480万円に対して82.7%です。譲渡所得税は別途かかります。

つまりこの提案書は、新築で買った部屋が、10年後に築10年の中古として購入価格の8割超で売れることを前提にしています。提案書のどこにも書かれていませんが、これが成立しなければ、月々2,000円の負担は最後に一括で顕在化します。

新築の価格には、建物と土地の値段のほかに、販売にかかった費用が含まれています。中古で買う人はその費用を負担しないため、新築の価格をそのまま引き継ぐ理由がありません。これは弊社の見方であって統計ではありませんが、出口の価格を「購入価格の何%か」で置いて確かめる意味はここにあります。

運営費は据え置かれない——修繕積立金のガイドライン

提案書の運営費12,400円は、管理費と修繕積立金の合計です。この行が35年間同じ数字になっている提案書は珍しくありません。ところが修繕積立金は、上げることを前提に設計されている場合があります。

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定・令和6年6月改訂)は、専有面積1㎡あたりの月額の目安を示しています。

修繕積立金の額の目安(機械式駐車場を除く。国土交通省ガイドライン)
マンションの規模事例の3分の2が包含される幅平均値
20階未満/延床5,000㎡未満235〜430円/㎡・月335円/㎡・月
20階未満/5,000〜10,000㎡未満170〜320円/㎡・月252円/㎡・月
20階未満/10,000〜20,000㎡未満200〜330円/㎡・月271円/㎡・月
20階未満/20,000㎡以上190〜325円/㎡・月255円/㎡・月
20階以上240〜410円/㎡・月338円/㎡・月

専有25㎡を当てはめると、20階未満・延床5,000㎡未満なら平均値で月8,375円、幅でみると月5,875〜10,750円にあたります。提案書の運営費12,400円には管理費も含まれているため、修繕積立金だけを取り出すと目安の下限に近い設定になっていることがあります。

同じガイドラインは、積立の方式についても書いています。均等積立方式は「将来にわたり定額負担として設定するため、将来の増額を組み込んでおらず、安定的な修繕積立金の積立てができる」方式です。一方の段階増額積立方式には、「将来の負担増を前提としており、計画どおりに増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する場合がある」という留意点が示されています。

令和6年6月の改訂では、段階増額積立方式をとる場合の引上げの考え方として、均等積立方式の月額を基準額としたうえで、「計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする」という目安が加えられました。裏を返せば、当初の積立金が基準額の6割まで低く設定されうるということです。買うときの運営費が安く見えるのは、それが理由の場合があります。

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」では、修繕積立金が計画に対して不足しているマンションが36.6%(前回調査より+1.8ポイント)にのぼります。積立金の値上げは、起きるかどうかではなく、いつ・いくら起きるかで見る項目です。

手元の提案書の運営費が目安に対してどの位置にあるかを見たい方へ。初回診断(60分・8,800円)で、管理費と修繕積立金を分けて確認します。

前提を動かすと、必要な売却価格はどこまで上がるか

提案書の数式はそのままに、家賃と運営費だけを現実に寄せた場合の10年です。

10年間の累計と、回収に必要な売却価格(売却諸費用4%・譲渡所得税は別途)
前提10年の累計回収に必要な売却価格購入価格に対して
提案書のまま−232,616円20,513,270円82.7%
家賃が年1%ずつ下がる−716,397円21,017,208円84.7%
運営費が目安の平均まで増額
(12,400円→13,375円)
−349,616円20,635,145円83.2%
6年目から運営費18,000円−568,616円20,863,270円84.1%
家賃 年1%下落 + 6年目から
運営費18,000円
−1,052,397円21,367,208円86.2%

返済は元利均等の閉じた式で計算し、10年後の残債19,460,123円は全ケース共通です(金利を動かしていないため)。空室・原状回復・固定資産税・保険料は含んでいません。金利が上がった場合の影響は「儲からない」の正体で扱っています。

4行目と5行目は、特別に悪い想定ではありません。修繕積立金の値上げは36.6%のマンションで不足が生じている以上、起きうる範囲です。家賃の年1%下落も、入居者が入れ替わるたびに新築の上乗せが落ちていくと考えれば穏当な置き方です。それでも、必要な売却価格は購入価格の82.7%から86.2%へ、3.5ポイント上がります。

中古としていくらで売買が成立しているか

出口の価格が現実的かどうかは、実際に売買が成立している価格を見て判断します。中部圏不動産流通機構の月例速報(2026年7月度)では、中部圏の中古マンションについて次の実績が公表されています。

中部圏の中古マンション(2026年7月度・成約登録状況)
項目実績
成約件数533件
成約価格(平均)2,349万円
成約㎡単価32.22万円
平均築年数27.54年

この数値は間取りや面積を問わない中部圏全体の平均で、ワンルームだけを取り出した数字ではありません。㎡単価をそのまま25㎡に掛けて自分の物件の価格とすることはできません。ここで見ているのは「築年数が進んだ中古が、実際に売買されている」という市場の事実です。

自分の物件について出口の価格を確かめるなら、同じマンションか近隣の同規模・同築年の成約事例を、レインズを閲覧できる不動産会社に出してもらうのが確実です。売り出し価格ではなく、成約価格を見るのが要点になります。売り出し価格は、売れなかった価格を含んでいるからです。

新築を選ぶなら確認する5項目

新築ワンルームがつねに不利というわけではありません。確認すべき項目が中古より多い、というのが実際のところです。

契約前に確認する5項目
確認することどこで確認するか見るポイント
① 修繕積立金の方式重要事項説明書・長期修繕計画均等積立方式か段階増額積立方式か。増額の時期と金額が計画に書かれているか
② 積立金の水準管理費・積立金の内訳専有面積1㎡あたりに直して、ガイドラインの幅(235〜430円)のどこにあるか
③ 出口で必要な価格自分で計算する10年後の残債+累計の持ち出しを、売却諸費用を差し引く前の価格に直す
④ 近隣の成約価格レインズの成約事例売り出し価格ではなく成約価格。同規模・同築年で③に届くか
⑤ 家賃の根拠賃料査定書・周辺の募集事例新築時の家賃か、築10年の同等物件の家賃か。どちらで35年分を組んでいるか

③は収支シミュレーターで計算できます。すでに保有している場合の判断はワンルームマンション売却の判断で扱っています。

よくある質問

新築ワンルームは買ってはいけないのですか

そうは考えていません。確認すべき項目が中古より多い、というのが実際のところです。この記事の提案書では10年後に購入価格の82.7%で売れることが回収の条件になるため、その価格が近隣の成約事例から見て現実的かどうかで判断します。

修繕積立金はどのくらい上がるものですか

計画によります。国土交通省のガイドラインは、段階増額積立方式をとる場合の目安として「計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする」としています。当初が基準額の6割まで低く設定されうるということなので、長期修繕計画で増額の時期と金額を確認してください。

提案書の運営費12,400円は安すぎるのですか

一概には言えません。管理費と修繕積立金の合計なので、内訳を分けないと判断できません。専有25㎡でガイドラインの平均値を当てはめると修繕積立金だけで月8,375円になるため、管理費が4,000円台であれば説明はつきます。内訳を出してもらうところから始めます。

出口の価格はどうやって調べればよいですか

同じマンションか近隣の、同規模・同築年の成約価格を不動産会社にレインズから出してもらうのが確実です。売り出し価格には売れなかった価格が含まれるため、成約価格を見ます。中部圏では2026年7月度に平均築27.54年・2,349万円で533件が成約しています。

すでに新築ワンルームを買ってしまいました

現実の家賃・運営費・金利で、月次・10年累計・出口で必要な売却価格を出し直すのが最初の作業です。そのうえで、売った場合の損益と、持ち続ける場合に売る条件を決めます。判断の手順はワンルームマンション売却の記事にまとめています。

まとめ

新築ワンルームで起きているのは、入口の数字と出口の数字が別々に置かれていることです。月々2,000円という入口は、10年後に購入価格の82.7%で売るという出口とセットになって初めて意味を持ちます。

修繕積立金の水準と方式、近隣の成約価格、家賃の根拠。この3つを確認すれば、必要な売却価格が現実的かどうかは自分で判断できます。判断のために必要なのは、良い物件を見分ける力ではなく、出口の価格を先に置く順番です。

出口で必要な価格を、
あなたの物件で計算します

物件を販売しないFP事務所が、修繕積立金の内訳と近隣の成約水準を踏まえて、10年後に必要になる売却価格を出します。初回診断は、本格的な検証が必要かどうかを切り分けるための時間です。

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この記事の前提と、その出どころ

本文の試算は次の一次情報を参照して前提を置いています。記事中の金額そのものは弊社が置いた仮定値であり、出典元が公表している数値ではありません。統計の数値と制度の内容は、各出典元の公表資料によります。

出典の確認日:2026-09-08

本記事の試算はいずれも一定の前提に基づく概算であり、収益・売却価格・融資条件・税額を保証するものではありません。実際の数値は物件・地域・金融機関・時期によって異なります。個別の税務判断は税理士に、法務判断は弁護士・司法書士等の専門家にご確認ください。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。
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