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COLUMN 10

「不動産投資は儲からない」の正体。
3つの利回りと、詐欺と呼ばれるものの中身

2026-09-08 約9分 最終更新:2026-09-08 執筆:株式会社アールラボ

「不動産投資は儲からない」と「利回り4.5%です」は、同じ物件について同時に成り立ちます。見ている数字が違うからです。

この記事では、失敗パターンの記事と同じ提案書を使い、利回りを3段に分けて計算します。あわせて、相談の場でよく聞かれる「これは詐欺なのか」という問いを、違法・不当な勧誘・前提の楽観の3つに分けて整理します。弊社は物件を販売しないため、買うべきという結論も、見送るべきという結論も同じ基準で出します。

CONCLUSION|この記事の結論
  • 「儲からない」の正体は、表面利回り4.45%・実質利回り3.85%・返済後は年マイナス0.09%という3段の差です。広告に載るのは一番上の数字で、家計に効くのは一番下の数字です。
  • 数字は物件の良し悪しだけでは決まりません。同じ家賃でも価格が下がるか、借入が減るか、金利が動くかで符号が変わります。この記事の試算では、金利が3.0%になると10年の持ち出しは約199万円、出口で必要な売却価格は購入価格の93.6%になります。
  • 「詐欺」と呼ばれるものは3層に分かれます。資料の改ざんや用途を偽った借入は違法、断った相手への勧誘の継続は法令が禁じる行為、そして最も多いのは違法ではないが前提が楽観な提案書です。3層目は自分で数字を置き直すしかありません。

この記事で使う提案書

使う数字は「やめとけと言われる5つの理由」失敗パターンの記事と同じ、新築区分マンション1戸の提案書です。弊社のコラムはすべてこの1件で通しているので、記事どうしを並べて比べられます。

この記事で使う提案書|新築区分マンション1戸PROPOSAL
物件価格
2,480万円
借入額
2,500万円(金利1.9% / 35年 / 元利均等)
想定家賃
92,000円/月(据え置き)
空室率
0%
運営費
12,400円/月(管理費・修繕積立金)
月々の返済
81,538円
月々のご負担
約2,000円

金利は2026年7月時点の一般的な水準を参考にした仮定値です。10年後の残債は約1,946万円になります。以降の試算では、この提案書の数式をそのまま使い、前提だけを差し替えます。

金利水準の参照:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」

「儲からない」の正体は、3つの利回りの差

利回りという言葉は、少なくとも3つの意味で使われています。同じ物件でも、どこまでを引いた後の数字かで結論が変わります。

同じ提案書を3段で計算した場合(年額・物件価格2,480万円に対する割合)
計算年間の金額価格に対する割合
① 表面利回り家賃 × 12 ÷ 価格1,104,000円4.45%
② 実質利回り(家賃 − 運営費)× 12 ÷ 価格955,200円3.85%
③ 返済後(家賃 − 運営費 − 返済)× 12 ÷ 価格−23,262円−0.09%

運営費は管理費と修繕積立金の合計12,400円/月。空室・修繕・固定資産税・保険料は含んでいません。これらを入れると③はさらに下がります。

広告に出るのは①、契約書に出るのは②、通帳に出るのは③です。「儲からない」と言っている人は③を、「利回り4.5%」と言っている人は①を見ています。どちらも同じ物件の話です。

③がマイナスであること自体は、それだけでは失敗を意味しません。返済のうち元金の部分は、支払いであると同時に残債を減らす行為でもあるからです。この提案書では、月々約2,000円の持ち出しを続けながら、10年で残債が2,500万円から約1,946万円まで減ります。

問題は、その減り方が出口の価格に見合っているかです。10年後に売って投じた資金を回収するには、売却諸費用を価格の4%とすると約2,051万円、購入価格の82.7%で売れる必要があります。新築で買ったものを、10年後に築10年の中古として、購入価格の8割超で売る——これが成立するかどうかが判断の中心になります。

参考までに、中部圏不動産流通機構の月例速報(2026年7月度)では、中部圏の中古マンションの成約は533件、成約価格の平均は2,349万円、平均築年数は27.54年でした。中古で売買が成立している市場の平均像です。物件ごとの条件は当然異なりますが、「築年数が進んだ物件が、いくらで実際に売れているか」を先に見ておくと、出口の想定が置きやすくなります。

手元の提案書で③がいくらになるかを知りたい方へ。収支シミュレーターで試算できます(入力値はブラウザ内だけで計算し、送信も保存もしません)。

数字が反転するのはどんなときか

③がマイナスなのは物件が悪いからとは限りません。同じ家賃でも、価格・借入・金利のどれかが動けば符号が変わります。この提案書の数式のまま、前提を1つずつ差し替えた結果です。

前提を1つ差し替えたときの10年(売却諸費用4%・譲渡所得税は別途)
前提月次の手残り10年の累計10年後の残債回収に必要な売却価格
提案書のまま−1,938円−232,616円19,460,123円20,513,270円
(価格の82.7%)
同じ価格で表面5.5%
(家賃113,700円)
+19,762円+2,371,384円19,460,123円17,800,770円
(価格の71.8%)
価格1,650万円・家賃78,000円
の中古(金利2.3%)
+8,367円+1,004,060円13,048,648円12,546,446円
(価格の76.0%)
提案書のまま、金利が3.0%
に上がった場合
−16,613円−1,993,506円20,288,961円23,210,903円
(価格の93.6%)

返済は元利均等の閉じた式で計算しています。回収に必要な売却価格=(10年後の残債+累計の持ち出し)÷(1 − 売却諸費用率4%)。譲渡所得税は含みません。中古のケースは価格・家賃・金利をまとめて置き換えた仮定値です。

この4行から読み取れることは1つです。「不動産投資が儲かるか」という問いには答えがなく、「この価格・この借入・この金利で儲かるか」にしか答えがありません。同じ家賃でも、価格が下がれば③はプラスになり、金利が1.1ポイント上がれば10年の持ち出しは約23万円から約199万円へ、8倍以上に増えます。

金利の幅をどう置くかについて、弊社は+0.5%と+1.0%の2通りを同時に見る方法をとっています。短期プライムレートは2026年8月3日から年2.375%が適用されており、2024年の利上げ前の水準から約1ポイント上がっています。すでに起きた幅なので、想定として無理のない置き方です。

「詐欺」と呼ばれるものの中身は3層に分かれる

相談の場では「これは詐欺ではないか」という言い方をよく聞きます。ただ、実際に持ち込まれる話は性質の違う3つが混ざっています。分けて見たほうが、次に取る行動が決まります。

層1違法にあたるもの:資料の改ざんと、用途を偽った借入

融資審査に出す収入資料や預金残高を書き換える行為、居住用の住宅ローンで投資用の物件を買う行為は、いずれも違法です。金融庁が2019年3月に公表した調査では、投資用不動産向け融資について、紹介業者経由の融資実行の経験がある銀行が97%にのぼる一方で、給与明細の原本を確認している銀行は25%、税務申告書の原本を確認している銀行は20%にとどまっていました。書類が改ざんされても気づかれにくい構造があったことになります。

住宅金融支援機構は【フラット35】について、「自らは居住するつもりがなく、投資目的で住宅を取得すること」を認められない利用として明示し、判明した場合は残債務の一括返済を請求するとしています。同機構は、虚偽の内容で融資を申し込む行為は犯罪であり、申込者自身が責任を問われるとも書いています。「頭金なしで買えます」「住宅ローンで買えます」という説明が出てきたら、その場で止めるべき話です。

層2法令が禁じている勧誘:断ったあとの電話、深夜・早朝の連絡

宅地建物取引業法では、勧誘のしかたそのものが規制されています。国土交通省は禁止される勧誘の例として、断っているのに繰り返しかけてくる電話、電話を切らせない長時間の勧誘、深夜や早朝の連絡、威迫する言動、自宅に押しかけて契約を迫る行為を挙げています。国民生活センターにも、20歳代からの投資用マンションに関する相談が寄せられており、2013年度の160件から2018年度(2019年2月28日時点)の405件へと2.5倍に増えたと公表されています。同センターは、投資にはリスクがあり利益が出るとは限らないこと、契約の意思がなければ会わずに断ること、融資を受ける際に虚偽の申告をしないことを助言しています。

層3違法ではないもの:前提が楽観な提案書

相談として持ち込まれる件数が最も多いのはこの層です。家賃が35年間下がらず、空室が一度も出ず、金利が動かず、修繕積立金が上がらない前提で作られた収支表は、それ自体は違法ではありません。ただし、その表のとおりに35年が進む確率は高くありません。この層に法的な救済はなく、契約する前に自分で前提を置き直すしか方法がありません。どの前提を疑えばよいかは収支シミュレーションの読み方失敗パターン7つで1行ずつ扱っています。

買う前に確認する5つのこと

層1と層2は、その場で立ち止まれば避けられます。層3は数字を置き直せば見えます。順番に確認する項目を5つに絞りました。

契約の前に確認する5項目
確認すること見るところ問題があるときの兆候
① 借入の種類申込書の商品名と金利住宅ローンでの購入をすすめられる
② 提出書類収入資料・預金残高の写し業者が書き換える、原本を見せない
③ 収支表の前提家賃・空室・金利・運営費の行35年間どの行も同じ数字
④ 出口の価格10年後の残債と必要売却価格売却の記載がない、または「値上がり」だけ
⑤ 勧誘のしかた連絡の時間帯と回数断ったあとも続く、深夜・早朝にかかる

③④は収支シミュレーターで自分で計算できます。⑤に当たる場合は、宅地建物取引業を所管する都道府県の窓口、または消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談する経路があります。

よくある質問

「不動産投資は儲からない」というのは本当ですか

見ている数字によります。この記事の提案書では、表面利回りは4.45%、運営費を引いた実質利回りは3.85%、返済まで引いた返済後は年マイナス0.09%です。広告に載るのは一番上、家計に効くのは一番下の数字で、どちらも同じ物件の値です。

返済後がマイナスなら、その物件は失敗ということですか

そうとは限りません。返済のうち元金の部分は残債を減らしているためです。判断の分かれ目は出口で、この提案書では10年後に購入価格の82.7%で売れれば投じた資金を回収できます。その価格が現実的かどうかで見ます。

金利が上がると、どのくらい変わりますか

この提案書で金利1.9%が3.0%になると、月次の手残りはマイナス1,938円からマイナス16,613円へ、10年の累計持ち出しは約23万円から約199万円へ増えます。回収に必要な売却価格も購入価格の82.7%から93.6%に上がります。

これは詐欺だと思ったとき、どこに相談すればよいですか

内容によって窓口が分かれます。資料の改ざんや用途を偽った借入は違法にあたるため警察や金融機関へ、勧誘のしかたが問題であれば宅地建物取引業を所管する都道府県の窓口や消費生活センター(消費者ホットライン188)へ。収支表の前提が楽観というだけであれば、法的な救済ではなく数字の置き直しになります。

中古のほうが有利ということですか

一概には言えません。この記事の中古のケースは価格・家賃・金利をまとめて置き換えた仮定値で、実際には修繕の履歴、耐震基準、融資期間の短さといった別の条件が効いてきます。価格が下がれば返済後の数字は改善しますが、そのぶん物件ごとの確認は増えます。

まとめ

「儲からない」という言葉と「利回り4.5%」という言葉は、同じ物件について同時に成り立ちます。表面・実質・返済後という3段の差を先に埋めておけば、その物件が家計に何を求めているのかが見えます。

そのうえで、価格・借入・金利のどれが動けば符号が変わるのかを確かめる。「詐欺かどうか」を判定する前に、この2つを済ませておくと、立ち止まるべき話と、条件を詰めれば成立する話とを自分で分けられるようになります。

その提案書の「返済後」を、
いっしょに計算します

物件を販売しないFP事務所が、あなたの物件と借入条件で3段の数字と出口の価格を出します。初回診断は、本格的な検証が必要かどうかを切り分けるための時間です。検証は不要という結論で終わっても構いません。

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この記事の前提と、その出どころ

本文の試算は次の一次情報を参照して前提を置いています。記事中の金額そのものは弊社が置いた仮定値であり、出典元が公表している数値ではありません。統計の数値と制度の内容は、各出典元の公表資料によります。

出典の確認日:2026-09-08

本記事の試算はいずれも一定の前提に基づく概算であり、収益・売却価格・融資条件・税額を保証するものではありません。実際の数値は物件・地域・金融機関・時期によって異なります。個別の税務判断は税理士に、法務判断は弁護士・司法書士等の専門家にご確認ください。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。
前提金利は2026年7月時点の一般的な水準を参考にしています。