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COLUMN 07

ワンルームマンションを売るかどうかは、
3つの数字で決まります

2026-08-21 約7分 最終更新:2026-08-21 執筆:株式会社アールラボ

保有しているワンルームマンションを売るべきかどうか。相場を調べる前に、確かめる順番があります。相場は3つのうちの1つでしかありません。

この記事では、売却の判断に必要な3つの数字を順番に出します。使うのは、これまでの記事と同じ新築区分マンション1戸です。

CONCLUSION|この記事の結論
  • 売却の判断は①今売ったときの過不足 ②持ち続けた場合の年あたりの純資産の増減 ③税金の3つで決まります。相場だけを見ても答えは出ません。
  • フルローンに近い買い方では、売却で現金が残り始めるのは保有15年目あたり。このケースでは3年目で△617万円、10年目で△218万円、15年目で+101万円でした。
  • 「5年待てば税金が安い」は、譲渡益が出る場合にだけ当てはまります。譲渡損なら短期でも長期でも譲渡所得への課税は生じません。

相場より先に見る数字

売却を考えるとき、多くの方は最初に相場を調べます。しかし相場だけでは判断できません。同じ相場でも、残債がいくら残っているかで結論が反対になるからです。

見る順番は次の3つです。

  1. 今売ったときの過不足。 売却の手取りから残債を引いた金額。マイナスなら、その差額を現金で用意しないと売れません。
  2. 持ち続けた場合の年あたりの純資産の増減。 毎年の持ち出しと、毎年減る残債の差。
  3. 税金。 譲渡益が出る場合にだけ効きます。
この記事で使う前提|新築区分マンション1戸CASE
購入価格
2,480万円
借入額
2,500万円(金利1.9% / 35年 / 元利均等)
月々の返済
81,538円
月々の負担
△23,113円(家賃を築10年相場に置き直し、空室5%・運営費25%を計上した場合)
売却諸費用
売却価格の4%

月々の負担の内訳は「やめとけと言われる5つの理由」の記事と同じです。売却価格の想定は、周辺の築10年・同タイプの成約事例から置きます。

成約事例の確かめ方:公益財団法人不動産流通推進センター「指定流通機構の物件動向」

① 今売ると、いくら足りないのか

元利均等返済では、初期ほど利息の割合が大きく、残債の減りが遅くなります。保有年数ごとに残債を出し、売却の手取りと並べます。

表1:保有年数別の残債と、売却したときの過不足
保有年数残債1,800万円で売却2,000万円で売却
3年2,345万円△617万円△425万円
5年2,236万円△508万円△316万円
7年2,123万円△395万円△203万円
10年1,946万円△218万円△26万円
15年1,627万円+101万円+293万円

※ 売却の手取りは売却価格から諸費用4%を引いた額です。過不足はそこから残債を引いた金額で、マイナスは不足を意味します。譲渡所得税は表3で別に扱います。

この表がいう「売れない」は、買い手がつかないという意味ではありません。不足分を現金で用意できないと決済できないという意味です。

② 持ち続けると、何が起きているのか

売れないなら持ち続けることになります。そのとき何が起きているのかを、年あたりで出します。

月々の負担が△23,113円なら、年27.7万円の持ち出しです。一方で残債は、10年目から15年目までの5年間で1,946万円から1,627万円へ、319万円(年63.8万円)減っています

表2:持ち続けた場合の年あたりの純資産の増減(10年目〜15年目)
項目年あたり
手元から出ていく持ち出し△27.7万円
減っていく残債+63.8万円
差引+36.1万円

※ 物件価格の変動は含めていません。物件価格が年36.1万円を超えて下がるなら、持ち続けても純資産は増えないことになります。

ここが判断の核心です。持ち続けることは、年27.7万円を払って年63.8万円の借入を返している状態です。差引では年36.1万円ずつ純資産が増えます。ただし物件価格の下落がそれを上回れば、増えていません。

だから確認するのは1つ。周辺の築年別の成約価格が、年36.1万円より速く下がっているかどうかです。

手元の残債とローン明細で同じ表を作りたい方へ。初回診断(60分・8,800円)で、保有年数別に試算します。

③ 税金は、いつ効くのか

「5年を超えてから売ると税金が安い」とよく言われます。これは正確には、譲渡益が出る場合の話です。

表3:譲渡所得の税率(土地・建物)
区分所有期間所得税住民税合計(概算)
短期譲渡所得5年以下30%9%約39.63%
長期譲渡所得5年超15%5%約20.315%

※ 合計には復興特別所得税(所得税額の2.1%)を含めています。所有期間は、譲渡した年の1月1日時点で判定します。購入日からちょうど5年ではないため、年をまたぐかどうかで区分が変わります。

税率と判定:国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」国税庁 タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」

表1のケースでは、10年目に1,800万円で売っても簿価を下回るため譲渡損になり、譲渡所得への課税は生じません。つまりこのケースでは、5年の壁は判断に影響しません。

逆に、購入価格より高く売れる見込みがある場合は、この表が効きます。1月1日時点での判定なので、年末の決済と年始の決済で税額が変わることがあります。

3つを合わせた判断

3つの数字が出たら、判断は4つのどれかに落ちます。

表4:3つの数字から導かれる4つの状況
状況①今売った過不足②持ち続けた増減考えられる進め方
Aプラスプラス急ぐ理由はない。他の使い道と比べて決める
Bプラスマイナス売却が現実的な選択肢になる
Cマイナスプラス不足分を用意できるかで決まる。用意できないなら持ち続けることになる
Dマイナスマイナス最も判断が難しい。不足分の調達方法と、繰上返済を含めた計画を立てる

表1のケースは、10年目時点ではCに当たります。「売りたくても不足分がある。ただし持ち続ければ年36.1万円ずつ純資産は増える」という状況です。ここで必要なのは相場の再確認ではなく、不足分をどう調達するかの計画です。

よくある質問

残債より安くしか売れない場合、売る方法はないのですか

不足分を現金で用意して完済するのが基本です。そのほかに、金融機関と相談して残債を別の形にする方法が取られることもありますが、条件は金融機関ごとに異なります。まずは不足額を確定させることから始めます。

今の相場はどこで調べればよいですか

ポータルサイトに出ている募集価格ではなく、成約価格を見ます。公益財団法人不動産流通推進センターが指定流通機構の物件動向を公表しており、地域と築年別の傾向が分かります。個別の物件については、複数の会社に査定を依頼して幅を見るのが実務的です。

繰上返済をしてから売ったほうがよいですか

繰上返済は残債を減らすので、不足額はその分小さくなります。ただし手元の現金も同じだけ減るため、売却時に用意する現金の総額は変わりません。効いてくるのは、繰上返済によって以後の利息が減る分です。金額は返済予定表から計算できます。

売却を相談すると、御社が仲介するのですか

行いません。弊社は不動産の売買・媒介・代理を行わないため、売却の実務は不動産会社に依頼していただくことになります。弊社が行うのは、売るか持ち続けるかを3つの数字で整理するところまでです。

持ち続けると決めた場合、次に見るものは何ですか

金利の見直し時期と、修繕積立金の増額計画です。どちらも持ち出しの金額を動かします。年あたりの費用としてどれだけ効くかは、リスクを金額に直した記事で扱っています。

まとめ

売るか持ち続けるかは、相場では決まりません。①今売ったときの過不足、②持ち続けた場合の年あたりの純資産の増減、③税金。この3つが揃って初めて判断できます。

このケースでは、売却で現金が残り始めるのは15年目あたりでした。それまでの期間に必要なのは、相場の再確認ではなく、不足分の調達計画です。

売るか、持ち続けるか。
3つの数字を出します

不動産の売買・媒介を行わないFP事務所が、残債と返済予定表から保有年数別に試算します。売却の実務は行わないため、売る前提でも持ち続ける前提でも同じ基準で計算します。

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この記事の前提と、その出どころ

本文の試算は次の一次情報を参照して前提を置いています。記事中の金額そのものは弊社が置いた仮定値であり、出典元が公表している数値ではありません。税率と制度の内容は国税庁の公表資料によります。

出典の確認日:2026-08-21

本記事の試算はいずれも一定の前提に基づく概算であり、収益・売却価格・融資条件・税額を保証するものではありません。実際の数値は物件・地域・金融機関・時期によって異なります。個別の税務判断は税理士に、法務判断は弁護士・司法書士等の専門家にご確認ください。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。
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