不動産投資ローンの金利は、日銀の利上げで
どう動くか。+0.5%・+1.0%で試算する
日本銀行は2026年9月18日、政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げました。2026年6月の利上げからわずか3か月での追加決定で、1995年以来31年ぶりの水準です。
不動産投資ローンの多くは変動金利で、各金融機関の短期プライムレートに連動します。政策金利が上がったからといって、その日から返済額が変わるわけではありません。ですが、いずれ効いてくる前提として、これまでの記事と同じ提案書に金利+0.5%・+1.0%を当てはめ、月々の返済・10年の持ち出し・出口で必要な売却価格がどう動くかを確認します。
- 日銀は2026年9月18日の会合で政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げました。2026年6月の0.75%→1.00%に続く追加利上げで、今後も「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ」ていく方針が示されています。
- 投資用ローンの金利がすぐに動くわけではありませんが、この提案書で+0.5%上がると月次は−1,938円から−8,439円に、+1.0%では−15,223円まで悪化します。10年の持ち出し累計は約23万円から最大約183万円まで広がります。
- 出口で回収に必要な売却価格も、購入価格の82.7%から+1.0%では92.6%まで上がります。金利が上がるほど、売却で残債を返しきれる余地は小さくなります。
この記事の内容
この記事で使う提案書
- 物件価格
- 2,480万円
- 借入額
- 2,500万円(金利1.9% / 35年 / 元利均等)
- 想定家賃
- 92,000円/月(据え置き)
- 空室率
- 0%
- 運営費
- 12,400円/月(管理費・修繕積立金)
- 月々の返済
- 81,538円
- 月々のご負担
- 約2,000円
頭金は入れず、借入額2,500万円は据え置いたまま金利だけを1.9%(現状)・2.4%(+0.5%)・2.9%(+1.0%)の3通りに変えます。金利の上昇は借入当初から適用した場合として計算しており、返済途中で金利が切り替わる想定ではありません。
2026年9月の日銀会合で何が決まったか
日本銀行は2026年9月17・18日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を1.00%から1.25%へ引き上げることを決定しました。判断の根拠として「基調的な物価上昇率が2%に近づいているなかで、現在の金融環境が緩和的である」ことが挙げられています。採決は7対2で、2名が反対しました。
| 決定日 | 変更前 | 変更後 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2026年6月16日 | 0.75% | 1.00% | 植田総裁の入院中、副総裁が議長を代行 |
| 2026年9月18日 | 1.00% | 1.25% | 1995年以来31年ぶりの水準。今後も引き上げの方針を明示 |
政策金利は日本銀行が金融機関どうしの短期の資金の貸し借りに適用する金利で、住宅ローンや投資用ローンの店頭金利そのものではありません。ただし各金融機関が変動金利の基準にする短期プライムレートは、この政策金利の動きを反映して見直されます。
物価の面では、企業物価指数が前年比で高い伸びを続ける一方、消費者物価指数(コア)は2%の目標にまだ届いていないという構図があります。日銀は「物価の上振れリスクを抑える予防的な措置」として今回の利上げを説明しており、今後の会合でも段階的な利上げを続ける方針を示しています。
投資用ローンの金利は、いつ・どう動くか
不動産投資ローンの多くは、各金融機関が独自に決める短期プライムレートに一定の上乗せ(スプレッド)をした変動金利です。短期プライムレートは日銀の政策金利と連動しますが、会合の翌日に自動で変わるわけではありません。各行が別途、改定を発表します。
| 適用日 | 短期プライムレート | 関連する日銀の動き |
|---|---|---|
| 2024年の改定前 | 1.475% | マイナス金利解除〜複数回の利上げ前 |
| 2026年8月3日〜 | 2.375% | 2026年6月の政策金利1.00%への引き上げを受けた改定 |
| 2026年9月20日時点 | 2.375%(据え置き) | 9月18日の1.25%への引き上げ分は本記事執筆時点で未反映 |
6月の利上げから8月3日の短プラ改定までは約1か月半かかっています。今回(9月18日)の分も、新規borrowingの金利は早い金融機関で10月以降、既存の借入は基準金利の定例改定(多くは年1〜2回)を経て反映される、という時間差が生じるのが通例です。「上がるかどうか」より「いつ・どれだけ反映されるか」を、契約している金融機関の基準金利の改定ルールで確認する必要があります。
金利が+0.5%・+1.0%上がると何が変わるか
同じ物件・同じ借入額・同じ期間で、金利だけを1.9%(現状)・2.4%(+0.5%)・2.9%(+1.0%)に変えた3通りです。金利は借入当初から適用したものとして計算しています。
| 金利 | 月々の返済 | 月次の手残り | 10年の累計 | 10年後の残債 | 回収に必要な売却価格 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.9%(現状) | 81,538円 | −1,938円 | −232,616円 | 19,460,123円 | 20,513,270円(82.7%) |
| 2.4%(+0.5%) | 88,039円 | −8,439円 | −1,012,735円 | 19,846,709円 | 21,728,588円(87.6%) |
| 2.9%(+1.0%) | 94,823円 | −15,223円 | −1,826,733円 | 20,216,934円 | 22,962,153円(92.6%) |
回収に必要な売却価格=(10年後の残債 − 10年の累計手残り)÷(1 − 売却諸費用率4%)。家賃・運営費は据え置き、頭金は0円としています。元利均等返済の閉じた式で計算した値です。
金利が1.9%から2.9%へ1.0ポイント上がると、月々の返済は81,538円から94,823円へ約1万3千円増えます。毎月の負担が増えるだけでなく、10年の持ち出し累計は約23万円から約183万円へ、約7.9倍に広がります。
出口の欄も動きます。金利1.9%では購入価格の82.7%で売れれば残債を返しきれますが、2.9%では92.6%まで必要な売却価格が上がります。頭金の記事で見た「頭金は出口の条件をあまり動かさない」のに対し、金利の変化は出口の条件を大きく動かします。頭金と金利では、効いてくる先が違うということです。
変動金利のまま持ち続けてよいか
投資用ローンで固定金利を選べる金融機関は限られており、多くは変動金利が中心です。低い金利のまま借りられる利点がある一方、今回のような利上げ局面では、返済額が事前の想定より重くなるリスクを背負うことになります。
ここで大切なのは、「変動金利は危険だから避ける」という単純化ではなく、金利が上がったときに家計がどこまで耐えられるかを、あらかじめ数字で持っておくことです。前章の3通りの表がその一例です。空室や大規模修繕と違って、金利の上昇は全期間・全戸に一律にかかってくる負担である点が、他のリスクとは性質が異なります。
借り換えや繰り上げ返済で金利上昇の影響を抑える選択肢もありますが、いずれも諸費用や事務コストがかかり、審査もあらためて必要です。「今の金利で借りられること」と「上がったときにどうするか」は、契約前に分けて考えておく話です。
金利が上がる局面で確認しておくこと
| 確認すること | 目安の置き方 |
|---|---|
| ① 自分の借入は何に連動しているか | 短期プライムレート連動か、市場金利連動かで改定のタイミングが変わります。金銭消費貸借契約書の金利条項で確認できます |
| ② 次の基準金利の改定はいつか | 多くの金融機関は年1〜2回の定例改定です。契約中の金融機関に確認しておけば、いつから返済額が変わるかの見通しが立ちます |
| ③ +0.5%・+1.0%でも家計が耐えられるか | この記事の3通りの表のように、金利を上げた場合の月次・10年累計・出口の必要売却価格をあらかじめ計算しておきます |
③は収支シミュレーターで金利を変えながら計算できます。出口の考え方はワンルームマンション売却の判断で扱っています。
よくある質問
日銀が利上げすると、投資用ローンの金利はすぐ上がりますか
すぐには上がりません。政策金利は金融機関どうしの資金の貸し借りに使う金利で、投資用ローンの店頭金利は各金融機関が決める短期プライムレートに連動します。2026年6月の利上げは8月3日の短プラ改定として反映されるまで約1か月半かかりました。9月18日の分も、契約している金融機関の改定ルールに沿って、時間差を置いて反映されます。
短期プライムレートとは何ですか
金融機関が優良企業向けの短期融資に適用する最優遇金利で、多くの金融機関が住宅ローンや投資用ローンの変動金利の基準にしています。三菱UFJ銀行は2026年8月3日から年2.375%を適用しています。日銀の政策金利が変わっても、短期プライムレートの改定は各金融機関の判断とタイミングによります。
金利が+1.0%上がったら、この提案書はどうなりますか
月々の返済は81,538円から94,823円に増え、月次の手残りは−1,938円から−15,223円に悪化します。10年の持ち出し累計は約23万円から約183万円に広がり、出口で回収に必要な売却価格は購入価格の82.7%から92.6%まで上がります。金利は借入当初から適用したものとして計算しています。
変動金利をやめて固定金利にしたほうがよいですか
一つの正解はありません。投資用ローンで固定金利を選べる金融機関は限られており、変動金利より高い金利水準になるのが一般的です。低い金利のまま借りられる利点と、上昇したときの負担増を比べて、家計がどこまで耐えられるかを数字で確認したうえで判断する話になります。
今後、政策金利はどこまで上がりますか
日本銀行は「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ」ていく方針を示していますが、具体的な到達水準や時期は明言していません。市場では2027年にかけて段階的な引き上げが続くという見方がありますが、確定した予定ではないため、本記事では公表済みの決定内容(1.00%→1.25%)のみを事実として扱っています。
まとめ
日銀は2026年9月18日、政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げました。投資用ローンの金利がその日から変わるわけではありませんが、短期プライムレートの改定を通じて、いずれ返済額に反映されます。
この提案書では、金利が+1.0%上がると月次の手残りが−15,223円まで悪化し、出口で回収に必要な売却価格は購入価格の92.6%まで上がりました。頭金が主に月々の家計を守るのに対して、金利の変化は出口の条件そのものを動かします。借りている金利が何に連動し、次にいつ改定されるのかを確認し、+0.5%・+1.0%でも家計が耐えられるかをあらかじめ計算しておくことが、金利上昇局面での備えになります。
金利が上がった場合を含めて、
10年分を計算します
物件を販売しないFP事務所が、現在の金利と+0.5%・+1.0%のシナリオで、月次・10年累計・出口で必要な売却価格を並べます。初回診断は、本格的な検証が必要かどうかを切り分けるための時間です。
初回診断を予約する60分・オンライン ¥8,800(税込)この記事の前提と、その出どころ
本文の試算は次の一次情報を参照して前提を置いています。記事中の金額そのものは弊社が置いた仮定値であり、出典元が公表している数値ではありません。政策金利・金利水準の数値と制度の内容は、各出典元の公表資料によります。
- 2026年9月18日の政策金利の変更内容(1.00%→1.25%)、決定の背景、採決結果、今後の方針 … 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日)
- 2026年6月16日の政策金利の変更内容(0.75%→1.00%) … 日本銀行「金融政策に関する決定事項等 2026年」
- 短期プライムレートの現在値(2026年8月3日適用)と改定の経緯 … 三菱UFJ銀行「短期プライムレート」
- 長・短期プライムレートの推移 … 日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」
- 投資用不動産向け融資の審査実態(参考・関連記事の出典) … 金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」(2019年3月)
出典の確認日:2026-09-20
本記事の試算はいずれも一定の前提に基づく概算であり、収益・売却価格・融資条件・税額を保証するものではありません。実際の数値は物件・地域・金融機関・時期によって異なります。今後の政策金利や各金融機関の基準金利の動向を予測するものではなく、2026年9月18日時点で公表されている内容のみを事実として扱っています。個別の税務判断は税理士に、法務判断は弁護士・司法書士等の専門家にご確認ください。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。
前提金利は2026年9月時点の一般的な水準を参考にしています。