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COLUMN 01

不動産投資のメリット・デメリット全10項目。
強みと弱みが同じ理由を、数字で解説します

2026-07-20 約6分 執筆:株式会社アールラボ

メリットとデメリットを5つずつ並べた記事は、すでに何本か目を通しているはずです。それでも判断がつかないのは、記事の質の問題ではありません。並べ方の問題です。

この記事でも10項目すべて挙げます。ただし、10項目のすべてが一点に帰着するという順序で書きます。その一点とは、借入です。

強みと弱みは、別々のリストではない

不動産投資が他の資産クラスと決定的に異なる点は、ひとつしかありません。他人資本で買えることです。

株式や投資信託を買うために銀行が数千万円を融資することはありません。担保になる実物があり、家賃という返済原資が見込めるという理由で、不動産にだけ融資がつきます。この一点が、この資産の性質のすべてを決めています。

以降の説明では、記事を通して同じ一件の物件を使います。営業提案でもっとも多く提示される、区分マンション1戸を想定しました。数字が出てくる箇所はすべて、この前提に基づくものと読んでください。

この記事で使う前提|区分マンション1戸CASE
物件価格
2,000万円
購入諸費用
140万円
総投資額
2,140万円
自己資金
340万円(頭金200万円+諸費用140万円)
借入額
1,800万円(金利2.0% / 35年 / 元利均等)
年間賃料
102万円(月8.5万円)
年間運営費
27万円(管理費・修繕積立金・賃貸管理料・固定資産税)
年間NOI
75万円

NOI(実質収入)は満室想定の年間賃料から運営費を控除した金額です。所得税・減価償却は含みません。金利は2026年7月時点の一般的な水準を参考にした仮定値で、実際の条件は物件・金融機関・時期によって異なります。
この記事の試算は、すべてこの1ケースを共通の土台として計算しています。金額はこの前提での数値であり、一般的な相場を示すものではありません。

借入で買う LEVERAGE MERIT DEMERIT 自己資金以上を動かせる 自己資金340万 → 総額2,140万 他人の家賃で元金が減る 返済原資が給与でない 団信・相続の圧縮 借入とセットの機能 売却後も債務が残る 損失にも同じ倍率 空室でも返済は止まらない 収入は変動、返済は固定 金利で収支が反転する 条件は借り手が決められない
図1:上下の対応する箱は、同じ性質の表と裏になっている。

「他人資本で買える」の裏面が「売却しても債務が残る」です。この2つは別の項目ではなく、同一の矢印の根元と先端にすぎません。天秤の左右に同じものが乗っている以上、項目を数えても傾きは決まりません。

メリット5つ

一般に挙げられる強みを列挙します。各項目に、借入のどの性質に由来するかを添えました。

01自己資金以上の資産規模を扱える
上のケースでは、自己資金340万円で総額2,140万円の資産を保有することになります。およそ6倍です。株式で同等のことを行えば信用取引となり、追証を負います。追証のない借入で自己資金の数倍を扱えるのは、実質的に不動産に限られます。
SOURCEレバレッジそのもの
02他人の家賃で元金が減る
返済原資は入居者の家賃です。手残りがほぼゼロでも、初年度で35.9万円の元金が減っています。その分だけ純資産は積み上がる計算です。損益計算書ではなく貸借対照表に現れるため、収支表だけを追うと見落とします。
SOURCE借入がなければ「元金が減る」という事象自体が存在しない
03インフレ耐性
物価上昇局面では家賃と物件価格が追随する一方、借入の元本は名目額で固定されています。資産が膨らみ、債務が実質的に目減りする。この二重の効果は、現金購入では得られません。
SOURCE債務の実質価値が希薄化する性質
04団体信用生命保険による代替
契約者に万一のことがあれば残債は消滅し、無借金の収益物件が遺されます。掛け捨ての死亡保険を圧縮できる場合、その削減額は実質的な利回りの上乗せとして計上できます。
SOURCE借入に付帯する制度。借りなければ団信は存在しない
05相続税評価額の圧縮
現金で2,000万円を保有していれば、2,000万円がそのまま課税対象になります。これを上のケースの物件に転換すると、土地は路線価と貸家建付地の評価減、建物は固定資産税評価額と借家権割合の評価減が働き、一定の前提のもとで評価額はおよそ982万円まで下がります。差はおよそ1,018万円。借入はさらに債務控除として機能します。
SOURCE評価減は不動産固有。債務控除は借入に固有
5つのうち3つは、借入がなければ発生すらしません。

デメリット5つ

番号は、対応するメリットと揃えてあります。

01売却しても債務が残る
自己資金340万円で2,140万円を保有するということは、価格が2割下落した時点で自己資金が消えるということでもあります。購入直後に2割下がった場合、売却手取りはおよそ1,534万円。残債1,800万円との差、266万円の債務だけが手元に残ります。レバレッジは損失にも同じ倍率で作用します。
SOURCEメリット01の裏面
02空室・家賃下落でも返済は止まらない
返済原資が他人の家賃であるということは、その他人が去れば原資も消えるということです。収入は変動し、返済は固定される。この非対称が、収支計画のもっとも壊れやすい箇所です。
SOURCEメリット02の裏面
03金利上昇で収支が反転する
借入条件を決めるのは借り手ではありません。変動金利であれば、市場金利の上昇はそのまま返済額に転嫁されます。影響の大きさは次章の試算表で確認しますが、多くの場合、想定より大きく出ます。
SOURCE借入条件は自ら固定できない
04流動性の低さ
株式は翌日に現金化できますが、不動産は買主の探索から始まり、通常3か月から半年を要します。売り急げば価格を下げるほかありません。借入があれば、その期間も返済は並走します。
SOURCE低流動性は不動産固有。返済の並走が待てる時間を短くする
05修繕・原状回復費の不確実性
給湯器の交換、エアコンの入替、退去時の原状回復。いずれも数十万円単位で突発的に発生します。上のケースの手残りは年3.4万円です。給湯器を1台交換すれば、数年分の手残りがまとめて消えます。
SOURCE実物資産固有。手残りが薄いほど直撃する
メリットの裏返しが、そのまま並んでいます。

借りるか、借りないか

ここまで挙げた10項目が実際にどう効くのかを、数字で見ます。冒頭の前提に置いた物件を、全額自己資金で取得した場合と、1,800万円を借りて取得した場合で比較します。物件も家賃も同一で、違いは調達方法だけです。

表1:同一物件を、借りずに買う場合と借りて買う場合
項目全額自己資金借入1,800万円
投下自己資金2,140万円340万円
年間NOI75.0万円75.0万円
年間返済額071.6万円
手残り現金75.0万円3.4万円
1年間の元金返済35.9万円
自己資金利回り3.5%11.6%

※ 前提は冒頭のケースに同じ。自己資金利回りは「手残り現金+元金返済」を投下自己資金で除した値です。

手残りは22分の1に縮んだのに、利回りは3倍を超えています。

差を生んでいるのは手元の現金3.4万円ではありません。効いているのは元金35.9万円のほうです。両者を合算した39.3万円がこの年に増えた純資産で、投下自己資金340万円に対して11.6%になります。

ただし、増えた金額そのものは75万円から39.3万円へ減っています。レバレッジは金額を増やす装置ではなく、投下資金あたりの効率を上げる装置です。この区別を曖昧にしたまま「不動産は儲かる」と語られると、議論が噛み合わなくなります。

金利だけを動かす

いま見た借入1,800万円のケースについて、金利だけを動かします。物件も家賃も借入額も返済期間も同一です。

表2:借入1,800万円・35年。金利のみを変動させた場合
金利年間返済額手残り現金元金返済自己資金利回り
2.0%71.6万円+3.4万円35.9万円11.6%
3.0%83.1万円△8.1万円29.5万円6.3%
4.0%95.6万円△20.6万円24.1万円1.0%

※ いずれも元利均等返済・35年。他の条件はすべて同一です。

金利が2%上昇すると、毎年20.6万円を持ち出す物件に変わります。

2.0%では毎月2,800円が手元に残り、4.0%では毎月1.7万円を給与から補填することになります。同じ物件、同じ入居者、同じ家賃です。金利2.0%から4.0%への上昇による年間返済増は、借入1,500万円で20.1万円、1,800万円で24.1万円、2,000万円で26.8万円になります。

一方、右端の自己資金利回りはマイナスに転じていません。手残りが赤字でも元金は減り続けるためです。毎月赤字だが純資産は増えているという状態は、この資産クラスでは日常的に発生します。

SAME FORMULA NOI 75 − 返済( 金利 ) = 手残り 金利 2.0% +3.4万 強みに見える 金利 3.0% △8.1万 判断が割れる 金利 4.0% △20.6万 弱みに見える 変わったのは金利だけ。強みと弱みは、最初から同じ数式だった。
図2:黄色で示した1か所を動かすだけで、同一物件が強みにも弱みにも見える。

「不動産投資は儲かる」も「不動産投資はやめとけ」も、多くはこの表のいずれか1行だけを見て語られています。どの行に立つかは、個々の借入条件でしか決まりません。

この表を、自身の物件と借入条件で確認したい方へ。初回診断(45分・5,500円)で試算します →

「やめとけ」も、あなたの数字ではない

この記事は不動産投資に反対する立場でも、推奨する立場でもありません。疑っているのは、次の2つの言明の両方です。

SELLER
「この物件なら間違いありません」
断定できるということは、金利も家賃も空室率も35年先まで動かない前提で計算しているということです。変数を固定した計算は、計算とは呼べません。
INTERNET
「不動産投資はやめとけ」
誰かが失敗した条件を、読み手の条件に置き換えずに語っています。自己資金2割・固定金利・長期保有の投資家には当てはまりません。

正反対に見えますが、欠けているものは同一です。個別の数字で計算されていないという一点にすぎません。売り手は売るために断定し、匿名の意見は書き手自身の条件で語ります。どちらも、読み手の借入条件も、家賃下落の許容度も、保有年数の予定も知りません。

借入を使わない不動産投資

強みも弱みも借入に帰着するのであれば、借りずに買えばどうなるのか。強みの源泉を外したとき何が残るかを確認しておきます。

表1に戻ります。全額自己資金の利回りは3.5%。総投資額2,140万円に対して年75万円です。預金や国債より高く、株式の期待リターンと比べて特筆すべき水準ではありません。加えて流動性は低く、修繕費は突発的に発生します。運用効率だけを基準にするなら、借入を用いない不動産投資は合理性を欠きます

ただし、合理性が成立する局面が2つあります。

相続を控えている場合

メリット05の評価圧縮は、借入がなくても働きます。現金のまま保有する2,000万円はそのまま課税対象ですが、同額を賃貸用不動産に転換すれば評価額はおよそ982万円。差はおよそ1,018万円で、相続税率30%なら税額で300万円前後の差になります。この局面では、利回り3.5%という数字は主目的ではありません。

分散が目的の場合

株式と債券に偏った構成に、相関の異なる実物資産を加える。目的はリターンの最大化ではなく変動の平準化です。借入を用いなければ、デメリット01から03はほぼ消滅します。

借りないのであれば、リターンではなく別の目的のために保有する。この整理があれば、利回りの数字だけで判断を左右されることはなくなります。

よくある質問

結局、メリットとデメリットはどちらが大きいのですか

比較する対象ではありません。同じ借入という一点の表と裏である以上、大小は項目数ではなく借入条件と保有計画で決まります。金利2.0%と4.0%では、同一物件が別の資産になります。

手残りが赤字でも純資産が増えるというのは本当ですか

事実です。金利3.0%のケースでは手残りが年8.1万円のマイナスですが、元金は年29.5万円減少しています。ただしこの状態を維持するには、毎年の持ち出しに耐える現金が必要です。

フルローンは危険ですか

危険というより、選択肢が減ります。自己資金を入れていない分、価格下落時に売却しても残債が消えません。保有を続けるほかなくなり、金利上昇や家賃下落への対応余地が失われます。

営業担当者の収支シミュレーションは信用できないのですか

数字自体の誤りは多くありません。問題は前提です。空室率0%、家賃35年一定、金利固定、35年後も購入価格で売却。この4つが置かれていれば、収支は必ず黒字になります。確認すべきは結論ではなく前提です。

相談すると物件を勧められるのではないですか

弊社は投資用不動産の販売・媒介を行いません。売る物件を持たないため、構造的に売り込みが成立しません。検証の結果、見送るべきという結論であればそのように伝えます。

まとめ

不動産投資のメリットとデメリットは、10個ずつ並べて比較するものではありません。すべてが「借入で買う」という一点に帰着する以上、天秤は項目数では傾かないからです。

傾きを決めるのは、自己資金の比率、借入金利、保有年数、そして家賃下落への耐性です。これらを自身の数字で数式に入れたとき、はじめてどちら側に立っているかが定まります。記事を読んで決まることではありません。

強みか、弱みか。
それを決めるのは、あなたの借入条件です

物件を販売しないFP事務所が、あなたの数字で計算します。初回診断は、本格的な検証が必要かどうかを切り分けるための時間です。検証は不要という結論で終わっても構いません。

初回診断を予約する45分・オンライン ¥5,500(税込)

本記事の試算はいずれも一定の前提に基づく概算であり、収益・売却価格・融資条件・税額を保証するものではありません。実際の数値は物件・地域・金融機関・時期によって異なります。個別の税務判断は税理士に、法務判断は弁護士・司法書士等の専門家にご確認ください。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。
前提金利は2026年7月時点の一般的な水準を参考にしています。